異界通信 編集部|特別調査レポート
静寂に沈んだ「温泉の館」
青森県弘前市、岩木山の麓。
深い森と霧に包まれたその地に、**「スペース21」**と呼ばれる廃墟がある。
かつてここは、観光客で賑わう温泉宿だった。
その名は「厳鬼山温泉(げんきざんおんせん)」。
地元では「熊のやかた」とも呼ばれ、食堂・宴会場・露天風呂を備えた小さなリゾートとして知られていた。
しかし、栄華は長くは続かなかった。
営業不振、そして時代の変化。
やがて経営は傾き、施設は閉鎖される。
その後、ある医療法人が建物を買い取り、**医療施設「スペース21」**として再出発を試みた。
だが、この転換こそが、後に「青森最凶の心霊スポット」と呼ばれる運命の始まりだった。
封印された転換期 ― 医療施設の闇
「スペース21」が医療施設へと姿を変えたのは、1990年代初頭。
その頃から、不可解な噂が囁かれはじめた。
「夜になると、廊下を誰かが歩く音がする。」
「患者の部屋に、誰もいないのにナースコールが鳴る。」
さらに奇妙なのは、ある職員の日誌に残された記録だった。
「〇〇さんがまた入院している。
一か月前にもう亡くなっているはずなのに。」
まるで、時間が“重なっている”かのような記述。
その日誌を残した看護師は、ほどなくして姿を消したとされる。
そして、廃墟へ ― 解体を拒む建物
やがて施設は閉鎖。
2000年代初頭には完全に無人となった。
地元自治体が解体を試みたが、工事初日に原因不明の重機事故が発生。
作業員のひとりが突然失神し、意識を失ったまま救急搬送された。
その後、工事は中止されたままだ。
現場に残された記録では、事故当日の午前3時、
重機のモニターに「人影」が映っていたという。

現地調査:2025年10月、夜のスペース21
異界通信 編集部では、2025年10月某日、現地調査を実施。
月明かりの下、建物は黒い影のように沈黙していた。
玄関のガラスはすべて割れ、
2階の浴場からは風が笛のように鳴っている。
懐中電灯の光を向けると、
廊下の奥に「白い線」が一瞬、横切った。
だが記者の隣には、誰もいなかった。
カメラには、浴場の鏡に映る“顔”のようなものが残されている。
解析結果では、「反射ではない構造物」と判定された。
廃墟マニアと心霊探訪者たち
「スペース21」は今、廃墟マニア・心霊YouTuberたちの聖地となっている。
SNS上では、夜中に撮影した映像や“音声記録”が数多く投稿されている。
「足音のような音が自分のマイクにだけ入っていた」
「撮影後にデータが消えていた」
といった報告が相次いでいる。
一部の映像には、**屋上に立つ“人影”**が確認されており、
それが“オーナーの霊”だとする声もある。

筆者考察 ― 建物が“記憶”を再生するという仮説
筆者はこの現象を、単なる心霊ではなく「記憶の再生現象」と捉えている。
廃墟とは、物理的な構造物であると同時に、
人々の感情や時間が“刻み込まれた記録媒体”でもある。
スペース21の壁や床に残る“気配”は、
生者の意識によって呼び起こされる「記録の再生」なのではないか。
建物が誰かを“思い出す”。
その瞬間、我々が感じる寒気こそ、記憶が再生される音なのかもしれない。
現地情報・アクセス
📍 青森県弘前市常盤野地内(岩木山麓)



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